「マレーシアではテレビCMより屋外広告が有効」日系老舗企業のマレーシア戦略とは
2019/09/19
マレーシアの首都、クアラルンプール随一の繁華街といえばブキビンタン Bukit Bintang。
銀座、新宿、六本木、渋谷をひとつに凝縮したようなスポットです。
そのメインストリート、ブキビンタン通りを歩くと目につくのが、ビルの屋上に設置された大型のデジタルサイネージ(DOOH)。最近では、ピコ太郎を起用して日本外務省とエイベックスが制作したSDCs活動のPR映像や、イタリアのヘヴィメタルバンド、ウインド・ローズの新アルバムのプロモーション映像が話題となりました。
この大型デジタルサイネージの管理・運営をしているのが、日系老舗企業の長田広告。
2014年にマレーシアに進出して、現地法人AD NAGATAを設立。
日本で培った屋外広告の手法を適度にローカライズした戦略を打ち出し、マレーシアでの認知度を上げたい日系&外資企業、またマレーシア企業にも支持される総合広告会社として知られています。
屋外広告日本最大手の「長田広告」は「業界世界最大手」を目指す
田んぼや畑にある野立看板、建物の壁面、駅のベンチなど、日本では至る所で見かける屋外広告(OOH, Out of home)。目につきやすい土地などを借り、看板スペースを設置して貸し出す。日本では一般的なビジネスモデルで、日本国内に約3万ものクライアントを持つ長田広告は、屋外広告の日本最大手です。
そんな長田広告が目指すのは、「屋外広告の世界最大手」。
その第一歩として、2014年にミャンマーとマレーシアに現地法人を、そして2019年にフィリピンに合弁会社を設立。着実に海外における実績を築いてきました。
「マレーシアでは屋外広告がテレビやラジオよりも優位」な理由
長田広告の坪野香梨国際事業部課長代理は、マレーシア市場についてこう分析します。
「マレーシアは、全国民が視聴しているメディアがないという特殊なマーケットです。だからこそ、屋外広告に利点があるのです」
マレー系、中華系、インド系からなる多民族、多言語、多宗教なマレーシアには、マレー語、中国語、英語、そしてタミル語のメディアがあり、コンテンツも各文化によって異なります。そのため、日本ではいまだに主流のテレビやラジオ、新聞に広告を出しても、ごく一部の人にしかリーチできないのです。
その点、屋外広告ならその地域で生活する多くの層にリーチできます。
さらにマレーシアは「電車よりも車」という人が多い車社会なため、駅ではなく、道路沿いや街中がより有効と坪野さんは分析します。
ブキビンタンの大型デジタルサイネージ
こういったマレーシア独自の特殊性を踏まえた上で長田広告が力を入れているのが、冒頭に紹介したブキビンタンの大型デジタルサイネージ。
大企業がオフィスを構え、旅行者が行き交い、クアラルンプール在住者もショッピングなどで訪れるブキビンタンは、マレーシア人はもちろん、在住外国人、旅行者などにもリーチできる理想的なロケーションです。
視認性が高く、優れたコストパフォーマンスの長田広告は、日系、外資、マレーシアの地場企業など多くの企業に利用されており、これまで、クアラルンプール郊外の三井アウトレットパーク、JINTO(日本政府観光局)、配車サービスのGRABが展開する電子ウォレットGRAB PAYなどの広告を放映してきた実績があります。
マレーシア独特の「審査」に関するサポートも万全
長田広告は、日系ならではのきめ細かい対応はもちろんのこと、マレーシア人の専門スタッフによる万全のサポートが受けられることでも高い評価を受けています。
というのも、国教がイスラム教のマレーシアでは、特別な配慮が必要だからです。
例えば、イスラム教の教えにそぐわない、肌を露出した女性、豚、犬などの映像はマレーシアでは広告のデザインに使用することができません。
万が一、イスラム教に背く内容の広告を掲載してしまった場合、企業イメージが傷ついてしまう可能性もあるでしょう。そういったリスクを避けるためにも、クリエイティブの審査をきっちりしてくれる総合広告会社を選ぶことが重要だといえるでしょう。
ロードサイドの小型看板、郵便局のデジタルサイネージにも進出
一方、日本での「地域密着型」のビジネスモデルを活かした広告としてマレーシアで展開しているのが、ロードサイドの小型看板、そして郵便局「POS」内に設置されたデジタルサイネージです。
地道な営業を展開して、クアラルンプールだけでなく、クアラルンプール郊外のセランゴール州、マラッカなどにも広告スポットを拡大中。
マレーシア最大の「屋外総合広告会社」となる日も近そうですね!