会社法コラム 第7回 株主総会(2)

会社法コラム 第7回 株主総会(2)

2019/12/02

1.株主の権利

株主は、株式会社との関係で様々な権利を有しています。そこで、今回は株主総会に関連して認められている株主の権利を中心に解説していきたいと思います。
 

2.株主提案権

株主総会における議題や議案は、日本会社法と同様に、マレーシア会社法においても株主総会を招集した者によって提案されるのが原則です。これに対し、それ以外の株主が株主総会に際し、一定の要件の下において議題や議案を提案する権利のことを日本会社法上では株主提案権といいますが、マレーシア会社法においては、株主が取締役に対して株主総会の招集を請求する場合に株主提案権が認められています(311条2項)。

株主提案権を行使しようとする株主は、その提案する議題や議案について、①ハードコピー若しくは電磁的方法に基づき、②株主総会で取り扱う議題についてビジネス上の観点から一般的な性質を述べ、そして、③株主提案権を行使する者がサインまたは署名をすることによって株主提案権を行使することができます。なお、提案する内容を決議内容とすることも可能であり、その内容を株主総会において変更することも可能です。
 

3. 株主の議決権
 

(1)一般的な議決権行使の方法

日本会社法の場合、株主は、株主総会において、その有する株式1株につき1個の議決権を有すると定められています(1株1議決権の原則、日本会社法308条1項)。これに対し、マレーシア会社法は、前回のコラムでも述べた通り、一般的な議決権行使の方法として、①投票による議決権行使、②挙手による議決権行使という2つの方法が定められています。

①投票による議決権行使の場合は、定款に特別の定めがない限り、保有する株式数に応じて議決権を行使することができます(1株1議決権)(293条1項(a)(ⅲ))。
これに対し、②挙手による議決権行使の場合は、定款に特別の定めがない限り、1人につき1つの議決権を行使することができます(1人1票)(293条1項(a)(ⅱ))。
 

(2)議決権に関する特別の制度

マレーシア会社法においては、議決権行使に関していくつか特別な定めを設けています。

ア 書面による議決権行使

非公開会社の場合、保有する株式数に応じて書面による議決権を行使することができます(293条1項(a)(ⅰ))。
 

イ 代理人による議決権行使

マレーシア会社法においては、株主が代理人を選任することによって、その代理人が議決権を行使することが認められています(334条1項)。
なお、②挙手による議決権が行使される場合においては、定款の定めにかかわらず、1人の代理人を選任して議決権を行使するように定められています(294条1項)。
 

ウ 株式の共同保有の場合における議決権行使

マレーシア会社法上においては、株式の共有者は1人の株主とみなされます。そして、株式の共同保有の場合においては、共同保有者間の合意に反しない限りで株式の共同保有者による議決権行使が認められます(295条)。
 

エ 議決権の不統一行使

日本会社法では2個以上の議決権を有する株主は、それらを統一することなく行使できます(日本会社法313条1項)。マレーシア会社法においても、株主総会において1票以上の投票権を有する株主は、投票において、すべての投票権を使用する、あるいはすべての投票権を同じ意見に投票する必要はないと規定されており(332条1項)、議決権の不統一行使を認めています。
 
 

4.株主総会決議に瑕疵がある場合の対処方法

日本会社法においては、株主総会決議の手続や内容に法令・定款違反などの瑕疵がある場合、訴えをもってその瑕疵を争うことができます。マレーシア会社法においても、裁判所が株主総会決議の有効性について判断することが認められています(582条)。そして、裁判所のいかなる命令によっても是正できない重大な瑕疵が存在している、または、生じる可能性があると裁判所が判断した場合、株主総会決議は無効と判断することができます(582条1項)。

是正できない重大な瑕疵がいかなるものを指すのかについては、マレーシア会社法上の条文上明確に示されていませんが、株主総会決議や取締役会決議における通知や期間における通知がなされなかった場合、あるいは、経営に関する手続の省略等によって法令・定款違反が生じた場合については、一般的に是正できない重大な瑕疵にはあたらないと解されています。

もっとも、会社の経営に関する手続の省略等によって法令・定款違反が生じた場合や、株主総会決議、取締役会決議がなされた場合、裁判所の判断又は利害関係人の申立てにより、裁判所は、株主総会決議の内容を修正もしくは無効とすることができます(582条3項)。

なお、株式会社が株主総会に関連する手続上の要件を遵守しなかった場合、裁判所は、株主による申請に基づき、株主総会決議の取消・変更を指示する場合があります(346条)。
 


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