会社法コラム 第6回 株主総会(1)

会社法コラム 第6回 株主総会(1)

2019/11/15

1.株主総会とは


株主総会とは、株主が直接参加して決議により会社の基本的意思決定を行うための機関であり、日本と同様に株式会社の重要な意思決定機関として会社法上重要な役割を担っています。マレーシアの会社法上においても、一定の事項について会社としての意思決定を行う場合に、株主総会決議が要求されています。また、会社法上に規定された手続を経ない株主総会は無効となる可能性があるため会社法上の規定を確認しておくことが重要と考えられます。

そこで、今回は株主総会についての基本的な手続を中心に解説していきたいと思います。
 
 

2.定時株主総会

(1)非公開会社の場合

定時株主総会とは、毎事業年度の終了後一定の時期に開催される株主総会のことをいいます。非公開会社の場合は、会社法上、定時株主総会の開催だけでなく、書面による決議によって意思決定をすることも認められています(290条1項)。なお、株主総会を開催する必要はなく、必要に応じて開催又は書面により決議する形で会社の意思決定を行うことが可能です。
 

(2)公開会社の場合

公開会社の場合は、非公開会社と異なり、定時株主総会を開催する必要があります(290条2項)。公開会社における定時株主総会においては、①監査を受けた財務諸表及び財務報告書の提出、②取締役の改選、③取締役の選任及び報酬の決定、④会社法又は定款に基づく通知が必要な決定又は事業について決議されます(340条1項)。

また、以下の通り、会社法上で定時株主総会の開催時期についても規定されています。
まず、新たに公開会社が設立された場合、設立後18カ月以内に株主総会を開催する必要があります(340条3項)。そして、その後は毎年一定の時期に定時株主総会を開催する必要があります。

毎年開催される定時株主総会については、原則として、①事業年度終了時から6カ月以内であり、かつ、②最後に開催された定期総会から15カ月以内である必要があります(340条2項)。

定時株主総会に際しては、定款でより長い期間を定めない限り、原則として定時株主総会開催日の21日前に招集の通知する必要があります(316条2項、321条)。もっとも、議決権を有するすべての株主が同意している場合は、招集通知の期間を短縮することが認められています(316条3項)。
 
 

3.招集

(1)招集通知

株主総会を開催する場合、原則として、①株主、②取締役、③監査役の全員に対して招集通知がなされる必要があります(321条1項)。ただし、監査役については、①公開会社における定時株主総会、②非公開会社における財務諸表が決議事項となる場合など会計事項に関する一定の事項を決議する場合を除き、株主総会の出席義務を負わないと定められています(285条)。

招集通知については、定款に特別の定めがない限り、招集通知の郵送、電子メールアドレスへの送信・ウェブサイトへの掲載、又はそれらを併用する形式で、文書によって行わなければならないと規定されています(319条)。招集通知をウェブサイトへの掲載により行う場合は、株主に対し、予め文書の郵送又は電子的方式による文書で、招集通知をウェブサイトへの掲載により行う旨を通知する必要があります(320条)。

招集通知の送付は、非公開会社の場合における普通決議については、定款でより長期間の日数を定めない限り14日前(316条1項)、特別決議については21日前になされる必要があります(292条1項)。また、公開会社の場合は、普通決議のうち、定時株主総会の決議については21日前、それ以外の決議については定款でより長い期間を定めた場合を除き、14日前になされる必要があります(316条2項)。そして、特別決議については21日前に招集通知がなされる必要があります(292条1項)。

招集通知には、①株主総会が開催される場所及び日時、②株主総会の議案を記載する必要があります(317条)。
 

(2)招集権者

マレーシアでは、原則として、取締役会及び発行済み株式の10%以上を有する株主に株主総会の招集権が認められています(310条)。また、定款に規定がある場合には発行済み株式の10%未満の株主について招集権を認めることもできます。ただし、判例(※1)によれば、310条の適用を排除する定款の定めを設けることはできないと解されています。

他方、議決権割合の合計10%以上の株主が株主総会の招集を請求した場合、当該請求がなされた日から14日以内に、取締役は株主総会を招集し、これらの株主による請求を受けた日から28日以内に株主総会を開催する必要があります(311条、312条1項)。これに対し、取締役が上記の請求があったにもかかわらず株主総会を招集しない場合、請求をした株主のうち、その過半数の議決権を有する株主は、請求をした日から3カ月以内に、株主総会を招集することができます(313条1項)。

非公開会社の場合、5%以上の議決権を有する株主は、311条に基づく株主総会の終了後12カ月が経過した場合であり、かつ、招集自体が濫用目的でなされたなど不正なものでない場合には、取締役に対し、株主総会の招集を請求することができます(311条4項)。

 ※1 Indian Corridor Sdn Bhd & Anor v. Golden Plus Holdings Bhd (Malaysia Court of Appeal, 2008)
 
 

4.株主総会の議事・決議

(1)議事 

株主総会においては、議事の進行を円滑に行うため、議長が選任されます。議長は、取締役会議長が株主総会の議長を務めることが通常ですが、定款に特別の定めがある場合には他の者が務めることも認められています(329条1項)。もっとも、議長が定款に定められていない場合や、議長が議事を進行しない場合などの一定の場合には、株主は株主総会における議長を選任することが認められています(329条2項)。

なお、定款で禁止されていない限り、株主総会の決議により、代理人を議長に選任することも認められています(336条)。
 

(2)決議の種類と決議方法

ア 決議の種類

株主総会における決議の種類としては、普通決議と特別決議が定められています。また、日本の場合と異なり、投票による決議と挙手による決議の2つの方法が認められています。

投票による決議の場合、原則として株主が所有する株式数に応じて議決権を行使できます。他方で、挙手による決議の場合、株主の頭数に応じて議決権を行使できます(1人1票)。
 

イ 普通決議

普通決議は、議決権を行使できる株主の過半数が賛成することにより可決されると規定しています(291条1項)。

決議が挙手により行われる場合、株主総会に出席した議決権を行使できる株主、あるいは株主の代理人の過半数が賛成することにより、普通決議は可決されます(291条2項)。他方、決議が投票により行われる場合には、投票された議決権総数のうち、その過半数が賛成票であった場合に、普通決議は可決されます。上記の投票には委任状による投票も含みます(291条3項)。

マレーシアの会社法上、定款や会社法に特別の定めがない限りは、原則として普通決議によって決議がなされます(290条3項)。普通決議により可決される例としては、取締役の選解任や新株発行、重要な財産の処分などが挙げられます。なお、2019年の会社法改正により、株式の分割・併合は普通決議で行うことができるようになっております。
 

ウ 特別決議

特別決議は、日本とは異なり、議決権を有する株主の75%が賛成することにより可決されると規定しています(292条1項)。決議が挙手により行われる場合、株主総会に出席した議決権を行使できる株主、あるいは株主の代理人の75%以上が賛成することにより、特別決議は可決されます(292条2項)。他方、決議が投票により行われる場合、投票された議決権総数のうち、その75%が賛成票であった場合に、特別決議は可決されます。なお、普通決議の場合と同様に、上記の投票には委任状による投票も含みます(292条3項)。

会社法上、特別決議により可決される決議の例は、社名変更や定款の変更、減資手続、株主による任意清算手続などが挙げられます。

また、特別決議を行う場合、決議を行う日の21日以上前に、株主に対して、予定される決議が特別決議である旨を明示的に記載した通知を行う必要があり、そのような通知がなされずに行われた決議については、特別決議とは認められません(292条1項、5項)
 

(3)書面による決議

書面による決議を行う場合は、決議事項につき必要とされる決議要件に相当する賛成の署名がなされた場合に可決されることとなっています(306条4項)。

そして、書面による決議は、会社法上、非公開会社のみに認められています(297条1項)。もっとも、①取締役の解任、②監査役の解任には用いることは認められていません(297条2項)。役員を解任することが妥当であるかどうかについては、書面による決議によらず、株主総会において議論をしたうえで判断される方が望ましいからではないかと考えられます。

書面による決議は、定款に期間を伸長する特別の定めがない限り、書面による議決権行使が可能な株主に回付が開始されてから28日以内に行われる必要があります。また、かかる期間の経過後になされた賛成の署名は無効となります(307条1項、2項)。
 

(4)会社法上決議の種類が定められていない場合

会社法において決議方法につき何ら定めがない場合、原則として、当該決議は普通決議となります(290条3項)。ただし、定款に特別の定めを規定することによって特別決議によることも可能になります。



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