会社法コラム 第3回 マレーシアにおける定款とその重要性

会社法コラム 第3回 マレーシアにおける定款とその重要性

2019/01/31

1.定款とは

定款とは一般的に会社の根本規範を定めた書面を意味し、会社の基本的な情報及び会社運営のルールが定められたものとなります。マレーシアを含め英米法の国では、会社の基本的な情報だけでなく、会社の意思決定・株式の発行等の株主間の合意事項を定款で細かく定めている会社が多くなっています。
 

2.新会社法の施行による定款に関する変更

 2017年1月31日から新会社法(以下省略)が施行されており、旧会社法から改正された重要なポイントの1つが、定款の概念の変更となります。旧会社法の下では、「基本定款(Memorandum of Association)」及び「附属定款(Articles of Association)」と呼ばれる2種類の文書が定款として規定されていました。しかし、新会社法の下では、基本定款及び附属定款の制度は廃止され、「Constitution」と呼ばれる単一の文書を定款として扱う旨、改正されています。
 

3.定款作成の自由とその重要性

株式会社について、定款の作成は任意となっており、定款を作成しなくても会社を設立・運営することが可能となっています(31条1項)。ただし、従来の定款を廃止しない限りそれが採用されるため、新会社法施行前から存在する会社で定款を廃止しなければ従来の定款に基づいて会社を運営する必要があります(34条c、619条3項)。なお、定款の変更・廃止には株主総会の特別決議[1]が要求されています(36条1項)。定款の導入・変更がなされた場合は、株主総会決議から30日以内に会社登記所(CCM)に登録申請又は通知をしなければなりません(32条4項、36条3項)。
定款を廃止した場合、会社の運営は原則として新会社法の規定に従うことになります(31条3項)。そもそも定款は会社の基本的な運営(株主総会・取締役会等)に関する手続きが記載されることが一般的で、特に合弁会社では少数株主の権利を保護するため、定款の記載は重要と言えます。そのため、定款を廃止・変更するにあたり、自身に不利益とならないかを慎重に検討する必要があると言えます。なお、条文上定款で規定することを想定している箇所は「定款に記載のない限り」等と条文に記載されています。
 

4.定款作成の意義

定款を作成することにより、新会社法の規定と異なる様々な規定を置くことが可能となります(31条2項)。また、種類株式の発行(90条1項)、株主総会の決議要件の普通決議から特別決議への加重(291条4項)は定款に記載することによって、実行可能とされています。自身が少数派株主である場合には、多数派株主の独断専行に歯止めをかけるため、株主総会で全会一致が必要とされる事項、取締役会の人数をどちら側の株主から選ぶか等、定款により各会社の事業に合わせた会社運営が可能となります。
なお、定款に記載したからと言って、第三者に対して対抗できるわけではないことに注意が必要となります(39条)
 

5.合弁契約と定款

 現地のパートナーと合弁会社を設立またはM&A後に合弁会社となる場合は、特段合意がなければ多数派の株主に都合の良い会社運営が実行されてしまうため、合弁契約書(JV契約書)等で会社運営・合弁解消等に関する事項を記載することが重要となり、合弁契約の内容を定款に反映することが望ましいと言えます。
 合弁契約書において、主に①出資割合/議決権保有割合、②取締役会の構成(人数・議長・どちらから何名選任するか)、③主要役員(CEO/CFO/COO等)の構成、④取締役会、株主総会の権限配分・決議事項(Reserved Matters)、⑤出資義務・資金調達、⑥剰余金の配当方針、⑦株式の譲渡制限及びその例外(Right of First Refusal, Put Option, Call Option等)、⑧デッドロック条項、⑨競業禁止義務、⑩合弁契約の終了・解除(デッドロック・重大な契約違反等)等の事項が規定されます。
 これらの事項は自身が多数派か少数派かによって立場が大きく異なるため、専門家と相談しながらご決定いただくことが推奨されます。
 

 

[1] 投票による場合は、議決権を有する株主の4分の3以上の賛成で可決(会社法292条1項)
 




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