昇給、給与上昇の背景

昇給、給与上昇の背景

2018/03/01

前回に続いて「昇給」についてお伝えしますが、「どのように賃金上昇に対応していくべきか?」の説明の前に、労働という目線でマレーシア経済を紐解いてみたいと思います。

昇給、給与上昇には様々な要因がありますが、マレーシアを解説するにあたり以下のポイントが特徴的であると考えます。

①最低賃金の上昇:
 2013年1月に導入された最低賃金令ですが、当初はマレー半島部RM900/東マレーシアRM800からスタートしましたが、2年に1度の改定とされており、第1回目は2016年7月にそれぞれRM1,000(11.1%UP)/RM920(15.0UP)となりました。また今年2018年に第2回の改定が見込まれています。
 この上昇分がそのままとは言いませんが、全体的な昇給に影響を与えている事は間違いないと思います。但し、この数値は他のアジア諸国から見ると少し異常なことが分かります。マレーシアの1人当たりGDPは、USD9,374で最低賃金(月額)はUSD246です。これは38.1倍の数値です。
 一方でインドネシアはどうでしょうか。インドネシアの1人当たりGDPはUSD3,604、最低賃金(月額)はUSD248で14.6倍。ベトナムの1人当たりGDPはUSD2,172、最低賃金(月額)USD165で、13.2倍です。最低賃金と1人当たりの所得に大きな差があります。この背景には多数の外国人労働者(ワーカー)を受け入れていることが要因としてありますが、多くのマレーシア人も同じ水準の賃金で働いている現実があります。ついては、適切な水準という点で考えると、この先も最低賃金は上がり続ける可能性は大いにあります。

②産業構造の変化:
 この
30年でマレーシアの産業構造も大きく変わりました。1991年、マレーシアの1次産業は、26.4%、2次産業は27.4%、そして3次産業は全体の46.2%と50%を割っていました。
 しかし、25年後の2016年には1次産業は12.1%まで減少、2次産業が27.5%と横ばい、一方で3次産業は60.4%まで成長しました。(日本の3次産業は約75%)それは高付加価値サービス、知的産業等含むサービス産業が伸びたことによる給与の上昇、また求められる人材が変化、不足したことが給与上昇の一因ともなっていると考えられます。

 この結果、労働生産性も著しく向上しました。労働生産性とはGDPを就労者数で割った「労働者1人当たりが生み出す成果」を指します。これは労働者のスキルや知識向上、また業務効率の改善などにより上昇します。ILO推計による労働生産性では、1991年のUSD29,428から2015年にはUSD54,652となり、倍率にして1.86倍にまで上昇しました。

③物価上昇:
 マレーシアの物価(
2016年)は、1990年比で1.75倍になりました。1990年代は毎年3~5%の上昇、2000年以降、鈍化するも1~3%程度、物価が上昇しています。つまり、5%の昇給をしたとしても、うち2%は物価上昇分として吸収されてしまうという事です。

以上、上記3つの点からマレーシアの労働を取り巻く環境をご説明しましたが、お分かりいただいた通り「給与上昇、昇給して然り」という背景であります。雇用主としては、出来るだけ安く優秀な人材を多く確保したいと誰もが思うことではありますが限界があります。今、力を注ぐ点は、如何に優秀な人材を適切に評価し、更に適切な給与を与え、長期的に確保し続けるかです。今後マレーシアで経営をする雇用主に求められている重要なポイントであると思います。

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