労働法・労務コラム 第4回 解雇

労働法・労務コラム 第4回 解雇

2018/02/26

1. はじめに

雇用契約は会社と従業員の継続的な信頼関係を基礎としています。長期間における誤解やすれ違いは感情的な対立を生みだしやすく、その上、解雇は従業員の収入を奪うものであるため、紛争が起こりやすく、解雇に関する法規制の理解が重要と言えます。そこで、本稿では解雇の基本的な法規制を中心に記載させていただきます。

2. 解雇の種類と要件

解雇はその原因によって、大きく①普通解雇②懲戒解雇③整理解雇に分かれます。
会社が従業員を解雇するにあたっては、原則として正当な理由(just cause or excuse) [1]が必要となります。解雇の原因・具体的な事案によって正当な理由の判断が異なる点に注意が必要です。

[1]労使関係法20条参照
 
(1)普通解雇
普通解雇とは整理解雇や懲戒解雇以外の解雇を指し、能力不足や勤務態度の不良など従業員の側に解雇事由がある場合に行われる解雇も含まれます。
成績不振の理由とする解雇も正当な理由となります。しかし、他の解雇手続と同様、個別案件ごとに正当な理由及び適切な手続きが必要と解されています。適切な手続きという面では解雇に至るまで従業員の能力を発揮させてために会社側として方策を尽くしているころを示し、書面などを通じて会社と従業員が十分にコミュニケーションをとることが重要となります。従業員の成績不振には様々な原因が考えられるため、原因の究明とともに配置転換などの解雇回避の努力をすることが会社には期待されています。
具体的には
①警告書の作成(従業員の成績不振の原因・理由、改善されない場合は解雇されること、改善のための必要期間を記載)
②改善のためのトレービング、コーチングなどを経て、
③解雇するかどうかを決定することが一つの手続きの流れとなります。

(2) 懲戒解雇
懲戒解雇とは会社が従業員に対する懲戒の手段として解雇することを意味します。懲戒事由の有無・解雇という手段の選択の妥当性を含めて、紛争になる場合が多く、会社は慎重に手続きを進める必要があります。なお、不正行為があり、適切な内部調査("Due inquiry") を行った場合には事前通知(雇用法14条1項a)及び解雇手当(雇用法規則4条)が不要となります。該当する従業員の存在が職場環境に悪影響を与える等の場合、懲戒処分の決定までに停職処分を行うことが可能となります。(雇用法14条2項)。
法律法の適切な内部調査の定義はありませんが、かきにて正当な理由と認められるために有効と考えられている手続きを記載させていただきます。

①不正行為が発覚した場合に不正行為の詳細を記載した書面を従業員に送付する。
②次に、不正行為について本人から十分な情報が得られない場合には、不正行為防止の対策を十分に行っていたかも含めて社内調査を行う。
③加えて、社内の第三者的機関による社内調査手続(Domestic Inquiry)を行う。
従業員が不当又は正当な理由なくして懲戒処分を受けたとときには、懲戒処分の通知から60日以内に労働局長に不服申し立てを行うことができます(雇用法69条3項)。
 
(3) 整理解雇
マレーシアにおいて整理解雇とは、一般的に余剰人員の削減を意味しています。整理解雇は、1975年労使協調行為規則(The Code of Conduct for Industrial Harmony 1975)に従って行われることが有効とされています。同規則はガイドラインであるものの、一般的に裁判所において公平で合理的な手段として参考にされているものと思料されます。そこで、以下に同規則に規定された整理解雇の流れを記載します。

ア まず、整理解雇を検討するにあたって、従業員の代表、組合、人的資源省(Ministry of Human Resources)と相談しながら、
①従業員の新規採用の凍結
②超過勤務の制限
③休日及び祝祭日の労働の制限
④就業日数の削減
⑤就業時間の削減
⑥従業員の再訓練の提供
を行うことが望ましいとされています。

イ また、整理解雇が必要であると判断した場合でも、
①できる限り早期の従業員に対する事前通知
②早期退職制度の設定
③労働局への通知
④人的資源省と連携した採雇用支援
⑤長期間にわたる整理解雇の実施
⑥まずは従業員の代表・組合への通知すること等の手続きを経ることが望ましいとされています。

ウ そして、整理解雇の対象となる従業員を選択する際には、まずは外国人従業員から解雇すべき旨、解雇法60N条に規定されています(Foreign Workers First Outの原則)。外国人従業員を解雇した後、さらに残りの従業員の中から整理解雇の対象となる従業員を選択する場合には、直近で雇用された者から順に遡る形で解雇の対象とするべきという原則が考慮されるものと考えられています(Last In First Out 原則 (LIFO 原則)。
同規則には
①業務の効率性を上げる必要性
②業務の効率性を上げるために必要な個々の従業員の能力、経験、技能及び資格
③勤続年数及び立場(外国人か、正規採用か、一時採用か)
④年齢
⑤家族の状況
⑥その他国で定められた基準を考慮し、決定されるべきと記載されています。
 
One Asia Lawyersの詳細はこちら

本資料に収録した各データ・解説は本資料作成時点の公開された情報に基づき、弁護士法人One Asia が編集・執筆したものですが、その正確性・完全性を保証するものではありません。また、本資料の情報を利用されたことにより生じるいかなる損害についても責任を負うものではありません。
                           ◆One Asia Lawyers

「One Asia Lawyers」は、マレーシアをはじめ、日本・ASEAN各国の法律に関するアドバイスを、シームレスに、一つのワン・フォームとして、ワン・ストップで提供するために設立された日本で最初のASEAN法務特化型の法律事務所です。本記事に関するご照会は以下までお願いいたします。info@oneasia.legal
 
 

BigAdvert (M-Navi Life)

 

企業・サービスを探す