労働法・労務コラム 第2回 雇用契約・就業規則

労働法・労務コラム 第2回 雇用契約・就業規則

2018/01/08

1. 従業員の雇用
日本同様マレーシアで会社が従業員を雇用する際には、従業員と雇用契約を締結する必要があります。マレーシアにおいても労働者保護の観点から様々な法令が定められており、会社は雇用にあたって関連法令・判例の知識を念頭におく必要があります。そこで本稿では、従業員との合意・規律等を定めた雇用契約・就業規則を中心に記載させていただきます。

2. 雇用契約

1雇用法

  雇用契約において雇用法 (Employment Act 1955) の規定が参考になります。雇用法は一部労働者に対し、主に金銭面での便宜を図る法律であり、賃金月額2,000RM以下の労働者又は肉体労働者等の特定職種の者を対象としています(雇用法(以下略)2条1項、別表1)。それ以外の労働者はセクシャル・ハラスメントに関する条項等一部の規定を除き、雇用法の対象とはなりませんが、裁判所の判例等で雇用法記載の条件以下で合意することができない事項があるため、注意が必要となります。また、競合他社より低い条件を提示することは人材確保が困難になるため、雇用法の対象とならない労働者に対しても雇用法に定める条件以上の条件を付与することが多くなっております。

2各種保障

  雇用法は労働条件の最低水準を定め、これを保障しています。雇用法または規則・命令の定める基準を下回る条件は無効となります(7条)。下記表に主な保障の内容を記載させていただきましたのでご参照ください。

概要 保障の内容
労働時間(60A条) 原則1日あたり8時間、週48時間以内 [1]
時間外労働 月104時間まで(雇用法規則)[2]
時間外手当(時給・日給・月給制の賃金の場合)(59,60A,C条)

勤務日・時間外        1.5倍
休日・時間内 半日以下    1日分
  同    半日超1日以内  2日分
休日・時間外                         2倍
祝祭日・時間内                      2日分(時間外は3倍)

祝祭日(60D条) 1年のうち最低11日(うち5つ所定)の祝祭日の休み、そのほか公休日として祝日法(The Holiday Act)に定めるの休み
年次有給休暇(勤務期間により保障される日数が異なる(60E条) 2年未満の場合     8日
2年以上5年未満の場合 12日
5年以上の場合      16日
病気休暇(勤務期間により保障される日数が異なる
(60F条)
2年未満の場合            14日
2年以上5年未満の場合 18日
5年以上の場合      22日
入院措置が必要な場合 上記病気休暇日数を含め最長60日
産休(37条) 連続60日(出産の直前30日から開始可能)

[1] フレックスタイム制・若年者における例外あり(60C条、若年者・子どもと青少年雇用法)
[2]
女性については夜間勤務(午後10時~午前5時)等の制限あり(34条1項)

3. 
就業規則

  法令上就業規則の作成は要求されておらず、就業規則についての定義・規定は存在しておりません。しかしながら、労働条件・待遇の基準を明確にすることで、従業員の不満、労使間での紛争を未然に防ぐため、多くの会社が労働条件や服務規律などを定めたものである規則である就業規則・その他の社内規則を定めています。また、会社のビジョン等を定めることによって、従業員の行動指針として活用されているようです。

ただし、就業規則で細部にわたり網羅的にすべての定めを置くことは現実的でないだけでなく、労働者の混乱を招くことがあります。そのため、就業規則では、基本的な項目を定め、個別のルールについては別途内規で定めている会社も多くあります。

下記表に就業規則の主要項目を記載させていただきましたのでご参照ください。   

項目 詳細
会社概要 ・ビジョン、ミッション・ステートメント、社史、組織図
・主な商品やサービスの紹介
雇用条件等 ・労働時間
・賃金、賞与、昇給(評価基準/方法)
・各種手当(残業、祝祭日勤務など)
・各種保険(健康保険、年金など会社によって拠出されるもの)
・休暇・祝祭日
・秘密保持に関する条項
・試用期間(解雇を含む)
・解雇にあたっての事前通知期間
・退職金
・転籍/異動
・健康診断
会社の方針 ・研修
・ドレス・コード
・顧客及び取引先との贈答品のやり取り
・昇進
・就業環境 (セクシャル・ハラスメント、喫煙、安全など)
各種手続等 ・懲戒
・昇進、業績評価(方法)、表彰
・欠勤/遅刻の報告
・休暇取得
・異動願
・事故の報告・届出
・緊急時の避難方法
・担保/保証
・会社に対する提案 (目安箱)等


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